二丁目少年ともや⭐︎ほげる

第1話:新宿二丁目で会ったような。

行かなくちゃ。早く。あの人が・・・
夕暮れ前の新宿駅
こんなに沢山の人がいるのに、皆んな気付いていない。

私たち・・・違う。僕たちは
新宿二丁目という欲望溢れる
大都市の片隅で『魔女と戦っていた』

「・・くん!」

黒い衣装に身を包んだ二丁目少年が、
絶望としか言えない巨大な魔女と戦っていた

「諦めたられまでよ。
でも、あなたなら運命を変えられる。

避けようのない滅びを
嘆きを

全部あなたが覆せばいい。
その為の力が、あなたには備わっているのだから。

だから、アタシと契約して
二丁目少年になりなさい」

「僕、すべての・・・」

カーテンの隙間から漏れる日差しが
僕の顔を照りつけた。

気のせいかな?いつもより
太陽の光が強く感じた。

脳裏に浮かぶあの光景

「二丁目少年、、、

ってなんだろう。

「智也遅刻するぞ〜」

目玉焼きの良い匂いが、部屋にまで入ってくる
いつもより少しだけ、寝坊してしまったみたいだ。

「おとーさん、おはよー」

見慣れた顔つき、いつも通りの声と
いつも通りの自分の家、当たり前だけれど

そんな何も変わらない今日に
心の奥底から、白いため息がこぼれた

「今日は、なんかいつもと少し顔色が違うね。
怖い夢でも見た?」

「ううん、大丈夫!
お父さん、ありがとう。」

いつも通りに始まる日常に安心して、そして
いつも通りに始まる日常に退屈していたんだ。

ご飯を食べきって、シューズに足を通す。
あれ?少し窮屈に感じるような気がする。

玄関を開けると、既に夏を目の前にしたような
そんな強い日光が僕の体を全力で包んだ。

通っている大学までは自転車で30分かかる。
小学校から友達の祐司くんと一緒に登校するのが日課。

家を出て少ししたところの十字路
僕を待ちくたびれた祐司が手を振る。

「おっせーっ!!!何時だと思ってんだよ!
も〜智也はマイペースなんだから〜」

「ごめんごめん。」

祐司くんは、昔から明るくて僕とは少し違うタイプ。
体育が得意で勉強は苦手。でも絵を描くのが上手かったりする。
友達が少ない僕だけど、祐司くんだけは親友って呼べる唯一の存在。

「今日さ〜なんか変な夢をみたんだよね。
なんか、Campy!っていう看板の上に、黒い痛々しい衣装きた同い年くらいの男がさ、
得体の知れない巨大な・・なにかと戦ってるんだけど歯が立たなくて。目が細くて揉み上げから顎までヒゲが繋がった少し背が高い男の夢

朝から笑わせるなと言わんばかりに、祐司は涙を浮かばせて大爆笑している。
でも少しして青ざめた顔した。

「今、Campy!って言った?智也ってもしかしてホ・・・
なんてな、ごめんごめん。からかって悪かったよ」

「お二人様、おはよ〜!きょ〜も良い天気
ですねッ!」

「お前は雨でも雪でも、良い天気っていうじゃねーか、この良い天気ババア」

この子は、たまに登校時に一緒になる隣のクラスの女の子で名前は志乃という。
ボーイズラブ漫画が大好物の所謂、腐女子。しかも結構活発で
今年は自作の同人誌を夏コミに出品するらしい。

「今日は金曜日、金曜日と言ったら何があると思います?」

僕と祐司は顔を見合わせ眉間にしわを寄せる。
そして声を揃えて言った

「何があるの?」

よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに

「金曜日の新宿二丁目はホモであふれているのよ〜」

その目は異常にキラキラしていて
キラキラしすぎていて、少女漫画のキャラがそのまま現実に出てきたように
狂気じみていた。こいつ魔女かもって思っちゃった。

「よかったら、あなた達も一緒にいかないかしら?
祐司くんがタチ、ともやんがバリネコ。

うん♡その設定でいきましょう♪」

新宿二丁目。聞いたことはあった。
沢山のゲイが夜な夜な集まる場所。まさにゲイの花園と言った所だろうか。

志乃は定期的に二丁目に遊びに行って
同人誌を描くための材料集めをしているらしい。

そんなことを話しているうちに学校に到着した。
少し遅刻気味だったけど、時間には間に合った。
朝のホームルームが始まる。

「今日はみなさんに大事なお話があります。心して聞くように。
スイカはスイカバー派ですか。本物のスイカ派ですか?はい滝根くん!」

「どちらでも良いんじゃないでしょうか・・・」

「その通り!スイカはどちらでも美味しい。
たかがスイカの選び方で、文句言う大人にはならないように!

特にスイカの種を取るのが面倒臭いとかいう男には注意するように!
性格面倒臭い傾向があります!あと魚の骨とるのが大変だから魚嫌いとかいうのもダメ!

男子の皆さんは、そんな男にならないように!女子の皆さんは、そんなのに母性本能働かせないように!以上!

そして今日は転校生を紹介します♪」

教室のドアがゆっくりと開き
そこにクラス中の視線が集まった。

「どうも。効率的な接客。充実した一人営業。
・・・すみません。つい癖が。

わたし・・いえ、俺の名前は亜弓 敏夫。よろしく」

クラス中が騒めいた。背高い、運動神経良さそう。
ヒゲ凄い。喧嘩強そう。

でも敏夫くんの目は、何故か僕を冷たい眼差しで睨みつけているようだった。
ホームルームが終わり授業が始まろうとする前、クラスの皆んなが
敏夫のところへと集まった。

「どこからきたの?」
「隣町。」

「すげー筋肉!部活なにやってたの?」
「色々なスポーツが好き。得意ではないけれど。」

「ねえ、智也さっき、アイツにガン飛ばされてなかった?」
「いや・・・えっと・・・」

敏夫が大きな体をゆっくりと持ち上げる。
「ごめん。ちょっと緊張しちゃったぽい。気分が。保健室ってどこかな??智也くん。案内してくれる?」
「えっ、はいッ!」

既に授業は始まっていて、しーんとした廊下。
そして階段の中

「あの・・・なんで、僕が保健係だって・・・しってる・・の?」
「先生から聞いちゃった〜」

不思議な感覚がした。この人は昨日の夢で何かと戦っていた黒い衣装の人だった。
それ以前に、何故だろう。初めて出会ったのに。しかも男なのに。

昔から知っているような。
恋人と一緒にいるような、そんな感覚がした。

「智也くん、智也くんは自分の人生が尊いと思う?自分の周りのこと大切にしてる〜?」
「・・・」

敏夫くんの目に力が入って、少し眉間を寄せた。
そして体の脇にある手を一瞬強く握ったのが見えた。

色々な気持ちがあった。お父さんとか祐司くんの事とか
志乃ちゃんとか好きと思える人はいるし大切にしたいと思ってるし

大切な存在だ。でも。。。

「智也は、そのままで居ればいい。
今までどおり、これからも。」

突然の発言にびっくりした僕を置いて
手を振りながら勝手に保健室の方へ消えて言った。

「敏夫くんは、スイカ好きかな〜?魚好きかな〜?」
「ごめん〜俺、種とるの嫌だからスイカ嫌いなんだ。魚もおんなじ」

先生の推理は超絶、的を得ていたと思った。
そして僕も同じ理由で嫌いだった。

午前の授業も終わり昼休み
屋上で僕と祐司と志乃の三人、ご飯を食べていた。

「ともやんと、例の転校生さんは、初対面ですのん?」
「常識的にはそうなんだけど・・・」

「実は昨日の夢に出てきたんだよね。。。」
「あら。実は前世とかで会っていて、深層心理に焼き付いてるのかもしれませんわね。まさに運命の出会いってやつでしょうか。」

「二人ともキャラが立ちすぎだっつーの!そんなの無いって!
前世とかさ、魔法とか、あったら縋りてーよもう。」

「そうですわね。
・・・あら、もう、こんな時間。次の時間体育なので、お先しつれいしますね。放課後、新宿三丁目駅の交番前に集合お願いね〜。」

「ははは。行っちゃった。ハリケーンみたいだったね。。」

二人で顔を見合わせて苦笑いする。
僕たちも次の時間は教室が遠いから、少し早めに教室に戻って用意することにした。

何やら僕の机の上に紙きれが置いてある。
あまり上手でない字で謎の数式。意味は正直全く分からなかった。
「この数式を手の内側に書いておくよーに!」あと簡単な解説が書いてあった。

次の時間

「この式かけるやついるかー?誰も手あげないのかーじゃあ、、、智也いけるかー?」
「智也・・・いけるわけねーだろう。先生も意地悪だよなー。」

周りから笑いがこみ上げる。
僕は落ちこぼれ。スポーツも勉強もどれも人並み以上にできたことがないし。

ご覧の有様。
皆んなが僕をバカにして、バカにされることにも慣れてしまっている。

「すみません。先生トイレいってきていいですかー?」

敏夫くんが手をあげる。
僕の方をみて、「手」と口パクして、細い目で頑張ってウインクする。
ほぼほぼ出来ていない。

手に書いてある数式を、黒板にうつしていく。
それを見て、先生も他のクラスメイトもビックリして静寂に包まれていく。

「凄い。完璧だ。どうしてこういう式が成り立つか説明できるか?」
「・・・はい。」

紙に書いて会った通りのことをそのまま喋った。
紙の中の解説もそのまま、しゃべり口調で書いてあったのだ。

「すげーな!智也見直したぞ!」

先生から拍手が出たと同時に、クラス一頭いい生徒からも拍手が出て
それは全体にまで広がっていた。

僕は苦笑いしか出来なかった。
それは何故この問題が出ることがわかったのか、という疑問もあったし

敏夫くんからの手紙は、
確実に僕の性格を知っているような感じだったからだ。

学校も終わり下駄箱の前
「さっきの授業完璧だったしょ?覚える事だけは得意なんだよね。」
少し自慢げな顔をして、僕に話しかけてきた。
正直、僕の気持ちはすごく複雑だった。

昨日の夢に出てきたこと。それより前から知っているような感覚。
そして敏夫が近くに来ると何故だろう恋人と一緒にいる感覚がする事。

「ごめん。さっきは有難う。先帰るね。」

その場から逃げるようにして、靴を履いて
校門まで校庭を走り抜けた。

「おい、智也〜」
「祐司くん、はやいくいこ」

ビックリした顔をしたけれど、祐司は軽い表情で
僕の全速力に追いついてきた。悲しい。

新宿三丁目は、比較的近い距離で
歩いて行っても30分くらいで到着できる。

まだ時間に余裕があったから、
僕と祐司は軽く喋りながら、交番へと向かう事にした。

「今日凄い大変な1日だったきがする・・・こんな事ってあるんだ。っていうのが連続で起きたような気持ちだよ・・・」
「お疲れさま。そりゃそーだよな。アイツ授業の内容どころか、先生が誰を指すかまで、全部知ってたってことだろ?魔法使いか何かなのかね。俺そういうの信じねーけど」

「まあ・・そうなるよね・・・」
「でも、アイツ。クラスに入ってきたときは冷たい目つきしてたけど、お前にやさしーよな」

「えーやめてよ。もしかしたら、僕のこと持ち上げるだけ持ち上げて落とす作戦なのかもしれないよ。」
「転校してきて初日のやつが、そんなこと考えるわけねーだろ!バカだな、智也は。」

話しているうちに人も増え、目的地に近い事に気付く。
さすが金曜日ということもあって、歩くのにも気を使うくらいに
新宿の街並みは人が溢れすぎていた。

交番の前・・・と言われたけれど
交番の前の志乃を見つけるのも一苦労だった。

ケータイが震える
志乃からのメッセージだった

「ごめんなさい。ちょっと授業が長引いてしまいました。二丁目へは先に二人で行っててくれますか?30分くらいしたらシャインマートの前の喫煙所でお会いしましょう」

僕と祐司はやや上目遣いで見つめあった。

「どうするよこれ」
「うーん・・・でも二丁目ってホモがたくさんいるんでしょ?怖い・・・ホモと会ったことなんてないし・・・」

「そりゃそーだよなー。まあ行ってみっか。」
「道わかるの?」

返答もなく、祐司は歩き始めた。
何故か全く迷っている風ではなく、確信的な歩き方に見えた。

もしかして場所知ってるのかな?
そんな風に思ったけど、また不思議な感覚が押し寄せてくる。

新宿二丁目・・・僕はいくの初めてなのに。
デジャヴというのだろうか。いやもっと断続的に記憶の中から呼び覚まされていく

この道のり・・・僕は、
二丁目にきたことが・・・ある?

いつだろう。
何しにきたんだろう。

忘れてただけで、結構よくここに遊びにきてた。
誰とだろう・・・

どこに・・・どこの・・・

思い出そうとするほど
頭の中のノイズが激しくなって記憶の蓋が分厚くなっていく

「顔色悪いな。だいじぶ?とりあえず、ここが二丁目のメイン通り」

祐司が心配そうに表情を伺いつつ教えてくれた。
ちょっと意識がぼんやりしかけていた僕の視界に映り込んだのは。

鮮明なほど記憶に残る
通い慣れた街並みだった。

「た・・け・・・・・て!

・・す・・・・・・けて」

処理が追いつかない頭の中に、誰かの声が大きく響く
一体何が起きているのか分からなかった。

もう今日一日全てが夢の中の出来事なんじゃないか?
そんな風に思うくらいに、もう混乱でいっぱいになっていた

新宿二丁目という少し世間から切り離されたような
変わった風がふく場所に足を踏み入れる

Roots、シャインマート、アラマスカフェ、Booty、、、
そして・・・

目を疑うものを見つけた。
「Campy!」
敏夫くんが立ってた場所だ・・・

「まが・・・・て、左の・・・路地へ・・・」
息を切らしながら言われた通りへ入る
そこには人一人より大きい、魔法陣が描かれていた

それを見た瞬間、
熱で物質が溶けるように、周りの景色が僕と祐司を残して
溶けて消えた

「なに・・・」
「なんだよこれ・・・」

強烈な光が視界を遮った瞬間
僕らの周りには折り紙で折ったようなゴリラと大量のバナナがあたり一面に落ちていた。

洋楽が爆音で流れ、その音楽に合わせて
折り紙のゴリラ達が踊りはじめる。

「ぇ・・・?ええ???二丁目ってこんな怖いところだったの?新宿二丁目ってこんなへんな場所だったの?お願い・・かえらせて・・もう」

「Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!Banana!

金土日月火水木金!金金金金!*金**金***金*E金V金E金R金〜Banana!」

「うっ・・・きて・・・くれたのね・・・」

今にも死んでしまいそうなくらいの傷をおった、クマみたいな縫いぐるみ?が
僕のところに寄ってきて倒れた

今まで見たこともない生き物で、口はなく
鼻もない。尻尾だけが長く胸には三日月のような模様が入っていた。

「たす・・けて」

「ねえ〜そいつから離れて〜」

声の方向を見ると、昨日夢に出てきた時と全く同じ衣装をした
敏夫が険しい眼差しで歩いてきた。

思わず、後ずさりした

「智也、そいつがどういう存在だかわかってんの?そいつはね」

 

「離れるのはお前だよ。」

遠くから酒灼けした声がする。

「こんな時に、一番会いたくない奴。お前とは戦うんじゃなくて、一緒に戦いたいんだけど。ロン。」

ため息を交えて、敏夫が言った。

 

「危なかったね。クロック・・・オン」

謎の少年がそういうと、僕と祐司を中心に巨大な時計のような
魔法陣が浮かび上がる。それは猛烈な勢いで拡大していき

目に見える範囲より広がってどこまで大きくなったかは分からなかった。
それを見て、敏夫はポケットから紙切れを取り出し右手を添えた。

気がつくと前触れも何もなく、そこに敏夫の姿はなくなっていた。

「俺の力を知ってるのか?

それにこの魔女空間の深部まで到達しつつある、俺のホモ力。それにも触れずに何処かへ消えた。つまり高速で移動したわけではなく、自分を別の地点に飛ばしたのか。さしずめさっきの紙切れは移動先の指定に使ったというところか。

まあ・・・なんにせよ。俺にとっても会いたくない奴だな。多分あいつはランクママ。俺と同ランク。戦えばどっちも無事では・・・

まぁいいや。」

自分達の足元には巨大な時計の針があり
それが反時計回りに動き始めた。それと同時に僕に助けを求めてきた謎の生き物の傷が
凄いスピードで回復していく。

「クロックオンクロック。ぷいです!」

心なしか、僕の今日一日の疲労感とかも全部抜けていくような気がした。
とても暖かい。

「自己紹介がまだだったね。俺はこの街でバーやってるロン。そして・・・」
僕に抱かれていた熊のような生き物が飛び降りてこっちを向いた

「ワタシの名前は、ニチョーベー。そして、智也。
ワタシと契約して二丁目少年になってよ!」

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