『 』の物語。第二話:仮面を落とした空。

空白の物語

『 』の物語。第一話:サンタ・クローズからのクリスマスプレゼント

2017.12.25

僕はサンタ・クローズによって引き起こされたソニックブームによって地下ごと抉られ、空中に持ち上げられた瓦礫と共に崩壊した新宿を漠然と見ていた。

これで死んでしまうのだろうか。

そんな気持ちさえ浮かんでこないほど頭は思考停止し、受け入れられないその非常識なその景色が勝手に僕の脳裏に入り込んで流れている。

意識が途切れたり、戻ったりまるで、機械のスイッチで遊んでいるみたいだ。

次第にそれが早くなっていく、そして誰かの顔が頭の中に浮かんでくる。

 

『僕さ、今はこんなんだけれど、しっかり守れるようになるから。もう少しだけ待ってて』

 

君は逆光の中にいて顔は見えない。

けれど、僕は君をよく知っているし、とっても懐かしい気持ち。

ついこの間まで一緒にいたように近くに感じるのに何処へ。

何で今まで、こんな大切で胸が苦しくなるほど愛おしい気持ち忘れていたのか。

これは『死に際の走馬灯』なんかではなく、僕の中にある『確かな記憶』

君の事を思い出して、そして感じる度に何だって出来そうなくらい力が沸いてくるような気がする。

そう思った瞬間に、完全に意識が我に帰り、そして僕が凄い勢いで急降下しているのもわかった。

さっきは動画をスロー再生しているように見えて音も感覚もなかったけれど、今はしっかりと五感が働いている。

あと少しで僕の体は地面に叩きつけられて弾け飛ぶけれど、何となく大丈夫だと思った。

気持ちを更に落ち着かせて、胸の中にある力を深く感じとって体に染み込ませていく、心なしか体中が白く光り輝いているように見えた。

 

「おい、大丈夫か、おい、、、」

 

和樹が僕のほっぺを軽く叩いて顔を覗き込んでいる。

視界は霞んで見えて、頭も正直ぼんやりだ。

 

「よかった。生きてたんだな。」

 

そう言われて、僕は自分が生きている事が何となく分かった。

はっきりとしない頭の中で、たくさんのスクリーンが同時に光を放ち、漠然と流れている。

サンタ・クローズが現れて東京を破壊した事、そして僕には好きな人がいて、その人と過ごした『つい最近の記憶』、自分の家族の事、友達のこと。

皆んなは無事だろうか、突然不安や恐怖が蘇ってくる。

怖くなって周囲を見渡すと、透明のクリスタルが僕を包むように生えていて、その先には完全に崩れ果てたビル等の瓦礫の海が広がっていた。

新宿なのに空が丸々見える。

 

「え・・・・」

 

見上げた空は、いつも以上に清々しい青色をしていて、そこには太陽はなく変わりに、よく見覚えのあるものが堂々と浮かび上がっていた。

 

「何で、空に地球が・・・」

 

更に色んな記憶が蘇り始める。

それはまるで、誰かの今までの記憶を直接書き込まれたかのようにも感じるし、今までの僕の記憶が架空であって、今の自分は本当の自分でもないように感じる。

例えるならば、同じ時間の中、二人の人生を同時に歩んできたような感覚だ。

その感覚が一気に広がって、僕は僕という存在が何なのか分からなくなった。

僕が思っている僕とは何だ。

自分の姿を思い浮かべるけれど、この記憶上の姿は本当に正しいのだろうか。

恐る恐る、自分の手を見つめる。

手相も、指の太さも、ちょっと親指が長い所も、爪の形も、紛れもなく自分のものなのに、記憶というものに、全く確信が得られない。

そして、一度も会ったこともない『思い人』への思い。そして思い出までもが今はしっかりと思い出すことが出来る。

 

愛しているという感覚と共に。

 

気がついたら、僕の目からは涙が流れていて、落ちた涙が薄く青い結晶体となってポロポロとビー玉みたいに転がっていた。

ケータイを取り出すと画面には新着メッセージがあり、それは母親からだった。

 

「東京大変みたいね。こっち帰ってきたら」

 

受信してから数十時間も経っていて、返信しようにも電波が圏外になっていて出来ない。

当たり前といえば、当たり前である。

周囲を見渡しても、木っ端微塵で電波塔なんて見当たらないのだから、ケータイも機能していなくて当然だろう。

 

和樹が遠くの誰かに向かって手を振って叫んだ。

その視線の先にはうっすらとモデルの様な華奢な女性のシルエットが見える。

 

「ヘカーーーー!!!こっちだー!」

「あいつは俺と同じ『光輝の王の側近の一人で印付き』。魔法大国アルデバラン最高の魔法使いで大賢者の称号を持っている。そして最高の『画家』だ。」

 

ヘカと呼ばれる女性は、クリーム色をした、さらさらと風になびく長い髪をしていて、真っ白な肌そして、海の様に深く青い瞳をしていた。

 

「プリアポス。いや、ここでは和樹と呼んだ方がいいかしら。そして、貴方。初めまして。私はアルデバラン魔法兵隊長で光輝の王の一人『ヘカテイア』と言います。主に魔法を研究し、そしてアルデバランの発展に全力を尽くしております。」

「アルデバランが魔法大国と言われるのは、魔法の研究と教育が何処よりも進んでいる事。そして魔法を応用した技術『魔術と魔導機構』が優れているからなんだ」

 

「和樹、だいぶ記憶が戻っているようね。」

「そうね。彼が何処まで話を聞いたのかわからないけれど、何が起こったのか私が分かる範囲で教えてあげるわ。ある日、地球に『金色の雨』が降りました。

それは森を豊かにし、世界中の人々の病を癒し、川を浄化し、そして、今まで空想上の生き物と言われていた存在を具現化させました。

その金色の雨は宇宙から降り注ぎ、後に全ての生命に、種を植え付け、体の中に新たな臓器を作りました。

その臓器は宇宙から降り注ぐエネルギー『フォトン』を蓄積する機能があり、フォトンは精神の影響を大きく受け、人々に特殊能力を発現させた。

傲慢な人間達は自らの能力に溺れ、少しずつ社会の秩序は乱れ、そして法律は力をなくし、いつしか世界は争いの絶えない世に発展してしまった。

人々の感情の高鳴りがフォトンに影響を与えたのか、元々存在するものがフォトンによって具現化したのか、7人の神にも等しい力を持った者達、つまり王が各地に出現し、戦いは終焉を迎え、そして王達は人々を連れて、自らの国を作り出した。

再び平和を取り戻した世の中では、各国独自の技術が育ち始めたの。

アルデバランでは、フォトンの研究が進み、フォトンは精神だけではなく、図形や言葉の影響も受けることが分かり、それを利用した技術が発展した。それが魔法。

平和を誰よりも望む黄昏の王の国では『フォトンを完全に遮断する装置』が発明され、すべての王達は二度と争いを起こさない為に、その装置を使うか議論の為に集められた。

私と和樹も光輝の王の護衛をする為に、アルデバランを降りて、黄昏の王の領土へ入り込んだの。

そして、王達の中には、今の地球が本当の姿だと装置使用を反対した者もいた。

その一人が白雪の王。

でも、フォトンを封じてしまう策は賛成派によって半ば強引に行われ、世界中の人々はフォトンを失ってしまった。

その装置は電波塔の様な姿をしていて、黄昏の王の力を何倍にも膨れ上がらせる機能もあった。

黄昏の王は、装置と自らの力を使い世界中の人々に『平和の記憶の植え付け』を行いそして、仮初め平和を強制的に作り出した。

でも、ご存知の通り、今回その装置は白雪の王によって破壊され、フォトンも再び人々に戻り、そして黄昏の王の能力の影響も消え去った。

私が分かるのはこれくらい。」

「ヘカ、アルデバランの位置が分かるか?」

 

ヘカは軽く右足をあげて、つま先で地面を叩いた。

すると僕たちを中心にヘキサグラム(六芒星)の魔法陣が大きく広がり、地面に描かれた。

 

「私の家はね、代々画家の家系だったの。だから私も画家を目指して絵を練習しててね。その時に私の能力が開花したの。

でもね、私の能力はあまり役に立たなかった。

何故ならアルデバランは誰でも、自分を守れるように徴兵制度がある実力主義の国。

戦闘に使えない私の能力は、誰よりも馬鹿にされた。

悔しくて悔しくて、せめて学問では一番取りたいと思って、熱心に魔法を勉強したの。」

 

ヘキサグラムがより複雑化し、そして隙間にローマ数字が複雑に入り込んだ。

そして眩く輝いて遠くの空に向かって弓矢のような光が放たれた。

 

「私の能力は触れた所に絵を描く事。魔法陣を絵として思い浮かべて触れれば、そこに陣を描いて発動させる事が出来る。

私は和樹みたいに『半神』ではないけれど、この能力を使って側近まで上り詰めた。

能力は使い方でその性質を大きく変える事が出来る。」

 

僕の気持ちは二人に全く追いついていなかった。

何故なら、僕は今だに自分の植え付けられた記憶が偽りだと受け入れられなくて、そして、本当の記憶を思い出したくないと思っている。

だから、全く状況を飲み込めないでいるし、魔法とか能力とか理解しようとする前に、頭から煙のように抜け出ていくような気がした。

そんな状態でも一つだけ分かることがあって、僕の真実の記憶が本当なら、僕は帰るべき場所も何処にもないということ。

今この二人から離れてしまったら、僕はまた一人ぼっちにしなってしまう事だけ、本能的に察していた。

 

「ねえ。アルデバランってどんな所?」

「そうだなー。アルデバランは光輝の王が治める浮島。そして魔導機構により光り輝く、魔法大都市だ。」

「アルデバランへ僕も連れて行って」

僕は伝説の浮遊大陸アルデバランへと向かう事を決意した。

次回予告

アルデバランへ向かう最中に出会った一人の男の子。

その男の子は僕の中の記憶に残る誰かに似た雰囲気をしていた。

ヘカテイアの能力とは?

ヘカの能力は『画家の能力』で、頭に思い浮かべた絵を触れた所に転写する力を持っている。

元々、戦闘には向いていない能力のため、実力主義な所があるアルデバランでは一発芸のような能力であった。

しかし、魔法を覚え研究した事で、魔法陣を触れた場所に即座に描く力として応用し、複雑な魔法陣を伴う大規模魔法でさえ、瞬時に発動させる事を可能にした。

描いた魔法陣はヘカテイアの意思で発動する事が可能で、場合によっては色を変えて周囲に溶け込ませ、意図したタイミングで起爆するなどの使い方も出来る。

過去の話

『 』の物語。第一話:サンタ・クローズからのクリスマスプレゼント

2017.12.25
空白の物語

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